つながる元気、ときめきキャンパス。大阪大学生活協同組合
<学生団体>6月のおすすめ本
★おすすめ本★ ★書評★

ISBN: 9784309461564
書名: 類推の山
著者: ルネ・ド−マル
出版社: 河出書房新社
本体価格: 900円

(1)『類推の山』 ルネ・ド−マル 著

 ?で、あなたはいったい何を探しもとめているのか??
未完の冒険譚の形をとるこの小説の、最終章はこう冠されるはずだった。

その頂上は見ることができない。しかし、〈案内人?人間界を高次に引き上げる真理への仲介者?〉が住まうその麓には、接近可能でなければならない。先導者ソゴル(sogol)は言う。 「どのみちこのような希望がなければ生活の全ては無意味になってしまう」 時空の原点、世界の頂点を象徴する〈類推(アレゴリー)の山〉を目指して、彼らは〈不可能号〉に乗り込む。

 「あなたは誰で、何をしに来たのですか?」 〈案内人〉の何気ない問いが真理の裾野にたどり着いた彼らの不意を襲う。〈虚〉に囚われた分身を殺すことで自らの正体を知って智慧を手にした兄弟の話中話は、この人類普遍的な主題を扱う物語の結末を美しく予言するが、この小説そのものが類推の山への道のりだ。作者ドーマルは私たちに託したのだ。人類の目指す末を。

【評::五十里翔吾】



ISBN: 9784043756018
書名: 嘘つきア−ニャの真っ赤な真実
著者: 米原万里
出版社: 角川書店 
本体価格: 560円

(2)『嘘つきア−ニャの真っ赤な真実』 米原万里 著
 
 グローバル世界で「私」を語るためのアイデンティティはどこまで必要か。本書は国境を越えた人間関係について国、民族、文化への帰属意識という視点から応えてくれる、まるで生きた歴史小説のようなエッセイだ。
 時は戦後15年。冷戦が危機の時代を迎える頃、日本共産党員を父に持つ著者は小・中学校時代に当たる4年間をプラハ・ソビエト学校で送る。そこには国際共産主義運動の要である『平和と社会主義の諸問題』誌編集局員の子女が通っていて…。親譲りの理想と愛国心を胸に国際関係を意識しながら生活する子どもたちの多感な時期の交流が回想的に綴られる。帰国後30年。著者は旧友を訪ねて東欧各所へ赴き再会を果たすが音信不通の間に彼女たちは一変した人生を歩んでいた。
  その一人、母国を捨て民族や言語を人間の本質にとっては下らないと語るアーニャに著者は辛辣な言葉を放つ。この本を読んで風化しない土着の人間関係の意義に共感してもらえたら嬉しい。

【評: 帆足星海】



ISBN: 9784101186382
書名: 淵の王
著者: 舞城王太郎
出版社: 新潮社
本体価格: 670円

(3)『淵の王』 舞城王太郎 著

「俺は君を食べるし、今も食べてるよ」

怖い想像をするから悪意が生まれ、「穴が空く」の「空く」は「悪」と通じていて、君の傍に闇の穴が黒々と開く。

テンポの良い軽口な会話が転がるように展開転回し、ページを捲る手が止まらない。その横でじわじわ、ひっそりと闇が迫り来る。文脈は転がって、余分な想像は働いて、悪意は侵食し、それすら引っ括めてどんでん返しも起こって結局どこに行き着くんだよって文脈が踊り狂う舞城王太郎らしい文体と福井弁と会話調のホラー。もちろん、ただのホラーなんかには終わらない。終われない。語り手は実体のない意識だ。2人称小説だからこその、もどかしさ。主人公を食べようと襲い来る闇に怯え焦り絶望し、それでいて影から見守るしかない。彼彼女は逃げるのか?戦うのか?けれど、最後にはその選択を愛し、その先に一緒に向かうだろう。ずっと傍にいたんだから愛してる。

モノ読もうって人間が想像力遮断してんじゃないよよよよ、グググググルニエみ、みみみっみみ見見見見っつけつけつけたよ。

【評:雨降 渦】



ISBN: 9784480095688
書名: 都市景観の20世紀
著者: エドワ−ド・レルフ
出版社: 筑摩書房
本体価格: 1,600円

(4)『都市景観の20世紀』 エドワード・レルフ 著

 古い看板や提灯の重なる路地とか、直線道路に並ぶファストフード店とか、植栽に囲まれたガラスと窓枠の高層ビルとか。ある景観を見て良し悪しを判断する人もいれば、景観が生活の後景に過ぎないために何も感じない人もいる。
  しかし景観は興味の有無に関係なく、そこに住む人間の社会を映す。巨大な建物は巨大企業が必要とするものであり、直線的な建築は大量生産に合う。車社会ではドライバーが見逃さない大きな看板が必要だ。このような現代の企業が作る合理主義的なモダニズムの景観は、土地の歴史を無視するものであり、規格化された社会の消費者に選択肢がないことの象徴でもある。そこでポストモダニズムが現れる。伝統的な要素や丁寧なデザインで、見た目はおしゃれで格好よくなった。では、中身はどうだろうか?
 本書では都市を作る側ではなく使う側から観察し、その社会的背景や原因を掘り下げていく。身の回りで応用したくなる景観の見方である。

【評:竹長優吾】




ISBN: 9784167910105
書名: 羊と鋼の森
著者: 宮下奈都
出版社: 文藝春秋
本体価格: 650円

(5)『羊と鋼の森』 宮下奈都 著

 ピアノに人生をかける人々の物語だが、スポットライトが当てられているのはピアニストよりも調律師である。
 「羊と鋼の森」という謎掛けのような題名は、羊毛フェルトのハンマーで鋼のワイヤーを叩くピアノの内部構造の例えだ。さらに羊と森は形を変えて幾度も物語の鍵となる。例えば、いつまでたっても大成できないのではないかという恐怖が、果てしない森を歩きつづける恐怖と重ねてかかれる場面がある。一つの分野で高みを目指している人ならば、分野に関係なく共感するのではなかろうか。
 この物語を、「駆け出し調律師の正統派成長物語」とまとめてしまうこともできる。できるのだが、それではこの小説の最も魅力的な点が伝わらない。とにかく音の表現が多彩で鮮やかなのだ。ピアノの響きが視覚や身体感覚に縦横無尽に置き換えられる。読者は畳み掛けるような比喩に圧倒され、没入する。美術館か映画館から出てきたかような読後感である。

【評:増田早也花】



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大阪大学美術部は、春季と夏季の休業期間中に開催される年間二回の部展を中心に活動しています。他にもいちょう祭、まちかね祭で展示や企画を行ったり、月に一回程度日付を決めて決まったテーマで創作活動を行ったりすることもあります。その他の期間でも、部員はいつでも部室に出入りすることができ、空きコマや土曜日を利用して思い思いに制作しています。油彩や水彩画、アクリル絵画や鉛筆画、もちろんキャンバスを飛び出した立体作品や設置型芸術などを制作する部員もいます。みなが創作する喜びを味わいながら、自由に活動しているのです!お昼休みや放課後など、だいたい誰か居ますので、興味のある方は気軽に学生交流等の一階にある美術部室を覗きに来てみてください。

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