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<学生団体>2月のおすすめ本

(1)観察の練習 菅俊一 著
▶ISBN:9784909242013
▶書名:観察の練習
▶著者:菅俊一
▶出版社:NUMABOOKS(トランスビュー)
▶本体価格:1,600円

 皆さんは大学に向かって歩いているとき、どこを見ているだろうか。そんなこと私は全く意識していない。思い出そうとしてもただぼんやりとした大学への風景が思い浮かぶだけだ。目から情報は入ってきても、脳がきっとその大半の情報を切り捨てているのだろう。しかし、大学への道のりの中で、きっと「何か変だな」という「違和感」を覚える光景に出くわすことも時にはあるはずだ。

そういった身近にある「違和感」を切り捨てずに、大切にその原因を紐解いたのが本書である。本書をひらくと、まず1枚の何気ない日常を切り取った写真がでてくる。しかし、その写真をよく見ると確かに「違和感」を覚えるのである。その「違和感」が何であるかを考えつつページをめくると、そこには筆者独自の観点から、「違和感」の原因の考察がなされている。それは誰かの手による創意工夫であったり、自然現象によるものであったり、はたまた自分の先入観によるものであったりもする。我々が普段見過ごしてしまうような箇所にこそ、アイデアを生むためのヒントが隠れている。日常の「違和感」の観察を通して気づきを得ることは、この本を読んだ直後から毎日の生活が能動的なインプットに変わるということではないだろうか。


【albatross】


(2)飛ぶ力学 加藤寛一郎 著
▶ISBN:9784130638128
▶書名:飛ぶ力学
▶著者:加藤寛一郎
▶出版社:東京大学出版会
▶本体価格:2,500円

  皆さんは海外旅行に行く時、空港で飛行機を眺めている時、某番組で飛行機事故などの再現ドラマを見ている時こう思ったことはないでしょうか。「飛行機ってどうやって飛んでるんや、、、」と。この本ではそういった飛行機の形状や操縦機構の意味、どうやって安定して飛行しているのかについて解説されています。

  飛行機の解説本と言われて思い浮かぶのは「飛行機のひみつ」みたいなタイトルで、部品の機能などを紹介している本を思い浮かべる人が大半だと思います。そういった本もとても楽しく読めるし興味をそそられるのですが、根本的になぜあのように翼が配置されているのか、尾翼(飛行機の後ろのほうにある小さい翼)がどのような働きをしてくれているのかなどについては書かれていないことが多いです。この「飛ぶ力学」はタイトルに力学と入っているだけに、航空学科の教授が身近な紙飛行機の例から始まって飛行機の飛ぶ仕組みについてしっかりと解説してくれています。これを読めば空港で飛行機を眺める新しい目線を手に入れられることでしょう。

 この本を手に取って開いてもらえばわかるように割とボリュームがあり読破するのには時間がかかります。しかしこの2月の冬休み期間を利用して読み応えのある本にチャレンジしてみるのもありなのではないでしょうか。そして読破した暁には心の中でニヤッとしながら飛行機に乗り込んでいること間違いなしです。


【albatross】


(3)スプーンと元素周期表 サム・キーン 松井信彦著
▶ISBN:9784022648198
▶書名:スプーンと元素周期表
▶著者:サム・キーン 松井信彦
▶出版社:早川書房
▶本体価格:1,000円

  この世のあらゆるモノは、元素で構成されている。私たちの体を始め、普段吸っている空気、普段食べているもの、普段使っている携帯電話など、私たちの身の回りには元素が溢れているのである。そんな元素には、とても面白い性質がある。周期性である。これに気づいたロシアの化学者メンデレーエフは、今日でも使われている周期表を作り上げた。恐らく誰もが中学校の理科室で見たことがあると思われる周期表だが、この表は 100以上ある元素たちそれぞれの歴史を教えてくれる。周期表から、元素発見までに費やされた化学者たちの努力、近代化への貢献、そして人類の失敗の歴史を知ることができるのである。

 この本の最大の面白さは、ある元素に着目して、その元素にまつわる、いわば「裏話」を事細かに紹介していることである。学校では教えてくれない元素のリアル、これを聞くだけで化学好きの私は心が躍る。何も化学的な裏話ばかりではない。元素の歴史を知ることは、その時代の時代背景、価値観、人間を知ることでもある。そして、現代の私たちの人生や価値観について深く考えることになるはずだ。

 周期表という一つのテーマから、ここまで深く入り込める本も珍しいだろう。化学を学ぶ私が大いに勧める一冊である。是非一読して、元素周期表という大海原を冒険してみて欲しい。


【albatross】


(4)フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか 小林章著
▶ISBN:9784568504286
▶書名:フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか
▶著者:小林章
▶出版社:美術出版社
▶本体価格:2,000円

 我々大学生がフォントのことを考えるときというのはWordやPower Pointで文書や資料を作成するときが多いのではないだろうか。PCに最初から組み込まれているフォントだけであってもその数は非常に多く、それらのフォントを使いこなすことは非常に難しい。

 本書では、そういったPCに組み込まれているフォントから、ブランドや商品のロゴでよく見るようなフォントがどのような性質をもち、またフォントが採用された背景を知ることができる。さらに、見る人にある特定の印象を与えるようなフォントの使い方についても詳しく述べられている。例えばブランドのDiorは、女性用の商品には線の細い手彫り風のNicolas Cochinというフォントを用いているのに対し、男性用の香水には線が太めで落ち着いた印象のCochinというフォントが用いられている。このように、フォントの選定には一度見ただけでは気づかないような工夫がなされており、街中で使われているフォントがどういった理由で選ばれたのか考えるのが非常に楽しくなる。フォントの使命は記載されている情報を引き立てて相手に伝えることである、という内容にフォントに対する向き合い方が示されていると感じた。


【albatross】


(5)とある飛空士への追憶 犬村小六著
▶ISBN:9784094510522
▶書名:とある飛空士への追憶
▶著者:犬村小六
▶出版社:小学館
▶本体価格:629円

「次期皇妃を水上偵察機の後席に乗せ、中央海を単機敵中翔破せよ」

 戦時中、劣勢の神聖レヴァーム皇国は次期皇帝の婚約者である「光芒五厘に及ぶ」美しさの少女ファナを敵国、帝政天ツ上から奪還するため艦隊を編成するも全滅。その絶望的な役目は両国の混血であり、差別の対象でありながら戦闘機の操縦には天才的な技術をもつ主人公のシャルル1人に託される。そしてファナとシャルルは時に敵とのスリリングな空中戦を、時には少年少女の恋を経て、天ツ上からレヴァームまでおよそ1万2000キロを駆け抜けていく。

 この本はいわゆる「王道」な内容である。「天空の城ラピュタ」を思わせる。しかしそんな悪く言えばありきたりに思えるこの物語だが、そうではない。まず、主人公とヒロインの間の心理描写がとても飲み込みやすく、そして美しい。身分の差など無視して一緒になりたいという想いと、それぞれの義務を果たすべきだという相反する感情が鮮やかな情景描写を絡めて描かれる。そしてもう一つ、空中戦が真に迫るほど緻密である。主人公、そして敵機の挙動が一つ一つ丁寧に描写されており、随所に挟まる心理描写と合わせてまるで空中戦の映像を見ているかのようだ。

 王道が王道足り得るのはその作品が優れているからこそだ。この作品は良い意味での王道を体現している。どうかこの本を読んで、どこか懐かしいような、しかしもっと素晴らしい冒険と恋を体験してほしい。


【albatross】


▼ 2020年2月の担当学生団体 ▼
大阪大学飛行機制作研究会albatross

 こんにちは。私たち飛行機制作研究会albatrossは鳥人間コンテストへの出場を目指して人力飛行機の製作を行っているサークルです。人力無尾翼飛行機という世界でも類を見ない特殊な機体にこだわり日々研究、製作を続けています。経歴としては過去9回鳥人間コンテストへ出場し、審査員特別賞を受賞した経験もあります。今年は上位入賞を目標に掲げ活動しています



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